Esquire(エスクァイア)特集 『文学は世界を旅する』 文学に触れることは旅に他ならない

Esquire (エスクァイア) 日本版 2007年 12月号 [雑誌] Esquire (エスクァイア) 日本版 2007年 12月号 [雑誌]
 Esquire(エスクァイア)の最新号の特集は「文学は世界を旅する」。いわゆる「旅文学」に焦点を当てて、ブルース・チャトウィンや「作家が選ぶ旅の本155」と銘打った特集が組まれている。
 このブログの密かなテーマの一つが「本で旅する」なので、非常に興味深い。

 ブルース・チャトウィンや作家達のオススメ本はいつかトレースするとして、個人的な「旅文学」について記しておこうと思う。
 特集「クロニクルで見るトラベローグと人類の密接な関係。この星に残された旅文学の足跡。」にも記されているのだが、自分自身にとっての旅文学の原点は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』(1719)とジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』(1873)だ。


 どちらも、幼少の頃に近所のお姉さんか従姉のお下がりとして貰った児童文学全集に収められていたのだ。出版社は忘れてしまったけれど、A4版よりも大きい立派な作りでカラーの挿絵が美しいと感じた記憶がある。

 ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』は、無人島に漂流してしまったロビンソンが独力で生活をしていく光景に心を奪われた。曖昧だけれども、苦心した末に美味しいパンが焼けた時のシーンは、子供心にアウトドア生活に強い憧れを抱かせた記憶がある。無人島には時々近隣の島の住民が上陸しており、捕虜の一人を助け出し、フライデーと名づけて従僕にする。そして、ロビンソンは、28年間を過ごした後、帰国する。確か児童文学の抄訳ではそこまで描かれていたと思う。
 
 大人になって、『ロビンソン・クルーソー』には続きがあることも知ったし、決して子供向けの物語ではなく、当時のイギリス状勢も深くえぐり出していることもうっすらと分かってきた。

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫) ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)
 絶海の孤島に漂着したロビンソンは合理的な行動と敬神の念を武器に、独り営々として生活を切りひらいてゆく。この物語がいまも魅力的であるのは、単にその主人公がイギリス18世紀の人間像を見事に形象化したものとなっているばかりでなく、現代に生きるわれわれ自身の人間性のもっとも中核的なものにもかたく結びついているからである。

ロビンソン・クルーソー 下    岩波文庫 赤 208-2 ロビンソン・クルーソー 下  岩波文庫 赤 208-2
 下巻はロビンソン・クルーソーの「その後の冒険」の物語である。帰国後の数年はこれといって何不自由のない生活をおくるが、重い病気のぶり返しのように襲ってくる放浪の欲望にはついに抗しがたく、妻の死をきっかけに再び航海に出る。夢にまで見た孤島を訪れたあと、いよいよアフリカ・インド・中国を経てアジア大陸を横断する大冒険が始まる。

 一方のジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』は、その期限付きの旅という設定だけあって、ハラハラしながら読んだ記憶がある。当時の日本の港町・横浜も登場していて、「昔の日本はこんな風だったんだ…」と単純に思ったりもした。

八十日間世界一周 (岩波文庫) 八十日間世界一周 (岩波文庫)
 1872年10月2日午後8時45分、ロンドンの謹厳な資産家にして知識人フィリアス・フォッグ氏は、多くの新聞が一斉にとりあげ狂気の沙汰と評した、80日間世界一周の旅に出た。彼はトランプ仲間と、1秒でも遅れると全財産を失うことになる賭をしたのだ。彼と忠実な従者パスパルトゥーを待ちうける波瀾万丈…。

 主人公のフィリアス・フォッグは、何時も懐中時計を持ち歩き、無駄のない正確さで日々の生活を送っている設定だったように思う。ある時、トランプゲーム仲間の金持ち達に、「八十日間で世界一周が可能となった」と宣言して、実際に大金をかけて旅行に臨む。正確無比な行動を自らに課しているからこそ計算される「八十日間」という期間なのだが、他の誰もそんなことは信じない…。

 恥ずかしながら、かつて心躍らせた両作品とも、大人になってからは一度も読み返していない。大方のプロットは頭に入っているので、近いうちに再び触れたいと思う。

 それにしても、「小さい頃は文学小説(もどき)を良く読んだな…」と改めて思う。ヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル(ああ無情)』、フランシス・ホジソン・バーネットの『小公子』と『小公女』、ルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』…恐らく手元にあった児童文学全集は全て目を通した記憶があるので、様々な「名作」を読んでいたのだと思う。

 成長してから興味が別の文学に移ったので、所謂「世界的名作」には触れる機会がなかった。児童文学の抄訳ではなく、次は重厚感溢れる作品として読み返したいと思う。

 Esquire(エスクァイア)の特集は「文学は世界を旅する」では、その他様々な作品が取り上げられている。思うに、「旅文学」とは別に「旅行記」だけではなく、それぞれの物語・小説全てに当てはまると改めて気づいた。
 ストーリーには舞台があり、書かれた時代の様々な国や地域の景色が織り込まれている。だから、その時代と場所に導いてくれる…それだけで十分「旅」だと思う。

Esquire (エスクァイア) 日本版 2007年 12月号 [雑誌]

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2007-10-29 | Posted in 旅のこと, Comments Closed